この世界の片隅に

今年はシンゴジラを見てとんでもない当たり日本映画を見てしまったと思ったけど、「この世界の片隅に」、これもまたとんでもない当たり日本映画だった。

 

原作は既読だったけれど、端折り方、逆に演出の変更、とても丁寧に出来ていた。リンさん関連、どこかの感想で原作とは違う知らなくても良いことは知らないルートのすずさんって書いてあって合点が行った。こっちもいい年なので、知らないことを知らないで済ませられる幸福はよくわかるし、その結果すずさんが側溝で背中に手を回せたならそれでいい。

 

そしてのん(能年玲奈)さんの演技。あまちゃんもそうだったけど、ぴったりの役をやらせたら右に出るものはいない。よく分からない事務所のゴタゴタがあり、声だけの演技なのにあの透明感と自然な雰囲気は干されてる現状が勿体なさすぎる。今の年齢だからこそ出せる良さ、ぴったりな役が当てはまれば歴史に残る作品を作れる憑依型の役者さんだ。

思えばあまちゃんが元気溌剌とした姿と日常から3.11を描き、この世界の片隅にでは同じように朗らかで笑顔の日常からの8.6、そして8.15を描いた。両方共そういう共通点があり、さらにそれからの姿を描いた作品だ。

 

シンゴジラはまさしく「立ち上がれ日本」だったけど、この世界の片隅には「歩こう一緒に」くらいの雰囲気か。でも意味は同じ。

とにかく書きたいことが山ほどある映画だった。そして一人でも多くの人に見てほしい映画だった。

 

ちなみに少しネタバレすると、人さらい。

お兄ちゃんは、原作では鬼いちゃんと表記されていて、すずさんの書いた漫画の中で髭もじゃになってワニと仲間になる。その姿は冒頭に出ていた人さらいと瓜二つだ。

これが何を意味するのかはファンタジーすぎるところだけれど、それも一つの形の世界で良いと思う。座敷童子もそうだけど、一つの救いの形だ。

妖怪や民俗学は、戒めと救い、両方の意味があるのだ。