悲衛伝(ネタバレ)

悲衛伝ネタバレ感想。

 

皆殺しの西尾維新を彷彿とさせたこのシリーズも、四国編の途中からあまり死者が出なくなり、今作も平和的な着地点のため太陽系の星と対話、会議、討論を繰り返す一冊。

星と言っても擬人化されているので、西尾維新らしい変人達による平和な会話劇とも言える内容だった。

 

9割9分は。

 

小説の難しい所は、ミステリーでも途中、結論が出てからのどんでん返しをやる場合、残りページでもう一波乱ありそうだぞ?と読者が察してしまう所。(これについては西尾維新も他の作品で言及してた気がする)

この本の場合はその逆で、明らかに残りのページ数が足りない。それ故、全て丸投げで次巻に続くか、何か変化球で終わるというのは読者が察してしまう。

前者の場合は仕方ないとしても、普通に考えれば後者なので予想をしながら読み進めるわけだけど、ここ最近の伝説シリーズの傾向からどんでん返しを想像しても、無意識のうちになんとなく平和的なオチを想像してしまう。

自分も、(全員いたら収集がつかないから、地球が一人立ってる、もしくは月が一人立ってて驚きそうなことを言って引きかなあ)と想像していた。

 

でも結果は半分合っていたけど、半分間違っていた。

戯言シリーズの時のように、あっさり殺す。サクサク殺す。速やかに退場させる西尾維新だった。

 

よくよく思い返してみると、登場人物がいわゆる死亡フラグのようなことを言っても登場人物が言及し、読者視点から死亡フラグがなくなったと感じさせられるシーンが2箇所あったのは、読者に誰も死なないと無意識のうちに思い込ませる目的があったのではないか。

だとしたらとても鮮やかだと思うし、そういうところが大好きだけど敢えて言わせてほしい。

 

趣味悪っ!

 

そんなわけで今作は、平和的な解決を提示して、それが上手く行きそうになって、最後は全部叩き潰す、100%マッチポンプな小説でした。面白かった!

 

 

悲衛伝 (講談社ノベルス)

悲衛伝 (講談社ノベルス)

 

 

カオスチャイルド

アニメは一時間スペシャルで始まるも、まさかのカオスヘッド総集編を第0話として放送。

確かにカオスヘッドのアニメは酷かったので、30分にまとめてても作り直すのは肯定。

ただ初見の人にとってあまりにも意味がわからない感はあるし、そこまでカオスチャイルドカオスヘッドのキャラクターが出るわけでもないので、これは紹介兼供養の意味合いもあるのでは。

 

そしてカオスチャイルド本編。

カオスヘッドはそもそもシュタインズゲートに比べると一枚落ちる感は否めなかったが、カオスチャイルドに関してはトゥルーエンド後の余韻や心を動かされる感覚は、シュタインズゲートに勝るとも劣らない。むしろ良くも悪くも関連作で骨の髄までしゃぶり尽くされたシュタインズゲートに比べると、まだ一作しか発売されてない分、シナリオ完成度の高さからもカオスチャイルドの方が今は強く心に残っている。

 

XBOXONEで発売したせいで過小評価されがちなカオスチャイルドだけど、アニメを機に再評価されると良いなあ。

最後まで見たら、間違いなく心に残る作品となるはずですよ。

 

 

CHAOS;CHILD - PS Vita

CHAOS;CHILD - PS Vita

 

 

 

CHAOS;CHILD - PS4

CHAOS;CHILD - PS4

 

 

「この世界の片隅に」その後

この世界の片隅に」を見ていろいろな感想を読み、聞き、少しでも広めるためにいろいろな人に勧めた。

けど、どうにも映画の魅力を伝えることが出来ない。というよりも、伝えることで何かが失われる気がしてならなかった。その気持ちを一番代弁してくれたのがこちらの感想。

 

http://blog.goope.jp/?eid=477

 

豚のおじさんが一番自分の感想に近いのも複雑なところではあるが、感覚としてはまさしくこれが一番近い。

なんにせよ、そこまでわかっていても人に勧めたく映画ではあるし、少しでも魅力を損なわないよう重々気を付けながら明日からも勧めていく。

何故この映画を人に勧めたくなるか。良い映画は広めたいという気持ちも勿論あるけれど、この映画が好きな人とはきっと何かを分かり合えるという期待もあるのかもしれない。昭和20年の広島という題材であっても映画館にこの映画を見に行き、見て良かったと言える人とは無条件で仲良くなれる気がするからだ。

この世界の片隅に

今年はシンゴジラを見てとんでもない当たり日本映画を見てしまったと思ったけど、「この世界の片隅に」、これもまたとんでもない当たり日本映画だった。

 

原作は既読だったけれど、端折り方、逆に演出の変更、とても丁寧に出来ていた。リンさん関連、どこかの感想で原作とは違う知らなくても良いことは知らないルートのすずさんって書いてあって合点が行った。こっちもいい年なので、知らないことを知らないで済ませられる幸福はよくわかるし、その結果すずさんが側溝で背中に手を回せたならそれでいい。

 

そしてのん(能年玲奈)さんの演技。あまちゃんもそうだったけど、ぴったりの役をやらせたら右に出るものはいない。よく分からない事務所のゴタゴタがあり、声だけの演技なのにあの透明感と自然な雰囲気は干されてる現状が勿体なさすぎる。今の年齢だからこそ出せる良さ、ぴったりな役が当てはまれば歴史に残る作品を作れる憑依型の役者さんだ。

思えばあまちゃんが元気溌剌とした姿と日常から3.11を描き、この世界の片隅にでは同じように朗らかで笑顔の日常からの8.6、そして8.15を描いた。両方共そういう共通点があり、さらにそれからの姿を描いた作品だ。

 

シンゴジラはまさしく「立ち上がれ日本」だったけど、この世界の片隅には「歩こう一緒に」くらいの雰囲気か。でも意味は同じ。

とにかく書きたいことが山ほどある映画だった。そして一人でも多くの人に見てほしい映画だった。

 

ちなみに少しネタバレすると、人さらい。

お兄ちゃんは、原作では鬼いちゃんと表記されていて、すずさんの書いた漫画の中で髭もじゃになってワニと仲間になる。その姿は冒頭に出ていた人さらいと瓜二つだ。

これが何を意味するのかはファンタジーすぎるところだけれど、それも一つの形の世界で良いと思う。座敷童子もそうだけど、一つの救いの形だ。

妖怪や民俗学は、戒めと救い、両方の意味があるのだ。